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相続人の借金滞納税金から相続財産を守るための相続の仕方

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2009年7月20日 第745号

遺産分割と第二次納税義務


Aさんは7000万円の国税を滞納していました。Aさんの妻が2億円の財産を残して亡くなります。相続人はAさんと子です。

Aさんは配偶者なので法定相続分2分の1です。2億円のうち1億円。遺産分割協議で1億円を取得したら、Aさんの滞納税金を管理している税務署担当者は、その1億円から滞納税額7000万円を回収するでしょう。財産は国にいってしまいます。

遺産分割協議は法定相続分に従う必要はありません。こんな会話があったのでしょう。

「私が相続しても国に取られてしまいます。だから私はいいから、あなたが相続しなさい。」

Aさんはほんの少ししか相続せず、ほとんどを子が相続するという遺産分割協議にします。

これに気づいた税務署担当者は子から7000万円を徴収しようとします。もちろん親子でも他人ですから、子から親の税金を徴収することは本来できません。

「滞納者が自分の財産を第三者に対して利益を与える処分をしたときは、利益を受けた者が受けた利益についてその滞納している国税の(第二次)納税義務を負う 」との法律があります。

滞納税金を払いたくないからといって、お金をすべて子に贈与して、一文無しになっても、贈与を受けた子は(第二次)納税義務者とされ、国は親の税金を子から徴収することができます。


贈与なら分かりやすいのですが、今回は遺産分割協議です。

遺産分割協議は相続人間で相続財産を分ける行為で、贈与とは違います。国税庁の通達での例示は「第三者に利益を与える処分は、例えば、地上権、抵当権、賃借権等の設定処分がある」となっており、「遺産分割協議」が含まれるとはとても読めません。しかし、国は子からの徴収を強行しようとします。

裁判になります。平成20年2月27日の東京高裁判決は税務署の勝ちでした。子が法定相続分を超えて相続した財産について第二次納税義務を認めました。

「私が相続しても国に取られてしまいます。だから私はいいから、あなたが相続しなさい。」はダメでした。子が相続した財産から親の滞納税金が徴収されることになります。

詐害行為と分割協議と放棄


この東京高裁判決が下敷きにした最高裁判決があります。

滞納税金でなく借金ならば詐害行為の問題です。債務者が債権者に損害をかけることを知りながら行った法律行為(詐害行為)を債権者は取り消せます。

最高裁は遺産分割協議を詐害行為の対象だと判決しています。

この事例に置きかえれば7000万円の貸し付けをしている貸金業者はこの遺産分割協議について債務者の財産を減少させる行為とし取消を求めることができます。(最高裁平成11年1月22日)


国税の強硬姿勢もこの判決があるからです。東京高裁も「詐害行為も第二次納税義務も似たようなものだ」と7000万円の第二次納税義務を認めたのです。

借金があれば相続放棄


遺産分割協議で「私はナシでいい」としたからいけないのです。Aさんには別の道がありました。相続放棄です。最初から相続人でなくなり、遺産分割協議の当事者でもなくなります。

相続放棄は詐害行為取消の対象外との最高裁判決(昭和46年6月21日)があるのです。Aさんの相続放棄により子が全財産を相続したら下敷きとなる最高裁判決は違う判決となり、違う結果となったでしょう。

国税庁は東京高裁判決をきっかけに、前記通達での「例えば」の例示に遺産分割協議を加えます。Aさん作戦は判決からも通達からも完全にダメになります。

多額の借金や滞納税金がある相続人が、親や親族の相続財産を、自らの借金や滞納税金から守りたければ自ら相続放棄です。

相続放棄は相続から3ケ月という期限があります。また誰かが相続放棄をすると別の親族が相続人になることがありますので注意が必要です。



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